2008年4月25日 22:00 CAT :
       

手塚ノーツの03

手塚治虫の医学マンガと言えば「ブラック・ジャック」。

でも、「ブラック・ジャック」が「ハンター・ハンター」(最近読んでるもので・・・)や「幽遊白書」なら、「レベルE」に値するマンガこそが「きりひと賛歌」。

個人的には、「地球を呑む」と並ぶ手塚治虫の最高傑作です。

主人公の「きりひと」は多分、キリストから来てるんだと思う。

マァ、別段キリスト教に関係するお話って訳でもないけど(ヘレン・フリーズのくだり以外は)、象徴的な意味としてキリストを持ってきていたのは間違いない。

「白い巨塔」の小説が書かれた頃と同時期の作品。

作中にも「『白い巨塔』と言う小説では・・・」と言うセリフが出てくる。

自分より面白いモノを書く人がいるとすぐにパクって「僕が書いた方が面白い」と言いたい手塚治虫(さいとうたかをに対抗しての劇画、水木しげるに対抗しての「ドロロ」などなど・・・)からすると、影響を受けたのかもしれない。

にしたって、「白い巨塔」が医者の政治的な面を強調していたとするのならば、「きりひと賛歌」こそ医者とは何かを誠実に突き詰めた作品だと思う。

「医者と言うものが・・・キリストのように・・・手で触れただけで死人を蘇らせ、病人を治せるのならばともかく・・・十年も二十年も学問に人生をすり減らし、道具を使い、薬も使い、おまけに金までとって直す保証もしないのが医者なら、医者なんか無用だ!!」
劇中のこのセリフが、この作品のテーマを物語っているように思う。

手塚治虫の凄い所は、それが、直接的表現じゃない事。

「白い巨塔」も、最近じゃあ「ブラックジャックによろしく」も、詰まる所は所詮は医者の物語でも、医者に対する批判的、非難的な気持ちが強まるばかりだと思う。

でも、この「きりひと賛歌」は、設定上医者の世界だけれども、医者とはどう言うものかを明確にした上で、暗喩的に教訓を心に置いてくる形をとっている。

だから読み終わった後に「医者の世界は嫌だ。」とか、「病院にいきたくない」と言う気持ちを起こさせる前述の2作とは大きく読後の感想が違ってくる。

佐藤秀峰は、このマンガを読んだ事なかったんだろうな。

そうでなきゃ、あんなタイトル(ブラックジャックによろしく)つけたりしないだろうと思う。

名作でした。

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