- 2023年4月1日 20:00 CAT :
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21デノナルーフルリプイエ
2021年春。
新型感染症のせいで会社が倒産してしまい、収入減を失ったオレは、その日の食事にも事欠くほど金がなかった。
ここは四国の片田舎。
少し町の喧騒から離れたところにぽつんと一軒家を見つけた。
どうやら、自営で会社をやっているようだった。
家には誰もいない。しかも、ドアにカギはかかっていなかった。
流石、田舎独特の不用心だ。
中には会社の事務所のような場所が併設されていた。
その奥に小さな金庫がある。驚くことに金庫にもかぎはかかっていない。不用心にもほどがある。
中には数百万の金が入っていた。
渡りに船とはこのことだ。
急ぎその金をバッグに詰めて家を出ようとしたとき、タイミング悪く家族が戻ってきた。母親と父親、それに子どもが2人もいやがる。
オレの存在に驚いたこの家族は、母親が子どもを避難させ、父親はどこかに電話を始めた。
パニックになったオレは、バッグの中に隠し持っていたバタフライナイフを一心不乱にこの父親を突き刺した。
何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。
動かなくなるまで突き刺した。
電話を見ると「110」と表示されていた。危なかった。だがまだ、通話になっていなかったようだ。
こうなったら仕方がない。
どこかに逃げた母親と子どもも殺すしかない。
すぐに見つけることが出来た。
家の中に隠れていた。こいつらは、頭空っぽなのだろうか。外に逃げ出せば、まだ助かる可能性もあっただろうに。
そのまま、母親と子どもも動かなくなるまで突き刺した。
これで一息つける。
考えてみれば、ここは町から離れたところのぽつんとある一軒家だ。しかも自営と言う事は、どこかに出勤することもないはず。
だとしたら、この家族が今、姿を消したとしても、大事にならない可能性があるかもしれない。
そう思いつくと居ても立っても居られず、オレは取り急ぎその会社の事務所らしい場所を漁ってみた。
社員はいない。家族だけでやっているような零細企業。
しかも、都合のいい事に、仕事は全てオンライン上でのやり取りだけらしい。クライアントは都会にいて合う事はない。
これなら、ばれずにやり通せるかもしれない。光が見えてきた。
PCをつけてみると、こいつはブログどころか、どうも「新都社」とか言う訳の分からない変なサイトに漫画やら小説やらを投稿して、悦に浸っていた変態野郎だった。こんな奴は死んで当然だ。
それよりはオレだ。オレが生きていくことの方が重要だ。
あれから2年。
オレは、「志茂田」と言う人間として生きてきた。
だた昨年中ごろに入ってから、新型感染症も落ち着いてきて、こいつの家族が会いに来るとか言い出した。
何とかごまかしてはいるが、ブログの投稿頻度や、漫画を描いていない事でも怪しまれている。
ペンネームをひらがな変えて路線変更を図っているように見せたりしたがあまり効果はなかった。
漫画を描くとばれるだろうから、小説を書いてみたが、どうも文体が違うような気がする。
今年に入ってからはブログの投稿頻度の事も言われ始めたので、面倒くさいが毎日更新してみた。この志茂田ってやつは、昔は日に何度も更新していたこともあるらしい。どれだけ暇人だったんだ。クソ。
ただ、もうダメだ。
バレるのも時間の問題だ。
最後に、ここに真実を書いてオレは、姿を消すことにしよう。
金庫にはまだ100万ほど残ってる。
この金があれば、少しは生き永らえられるだろう。
明日以降、ブログの更新が滞れば、そう言う事だ。
じゃあな。
短い時間だが、楽しかったよ。
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