- 2021年4月1日 12:31 CAT :
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11デノナルーフルリプイエ
オレが生まれた時、実は双子だったとこを知っているのは、両親と嫁だけだったりする。
生まれた時オレは、無頭症と言う所謂脳がない状態だった。
そして、一緒に生まれてきた兄は、体のほとんどを欠損した状態だった。
つまり、兄は首から上が正常で、オレは首から下が正常な状態。
このままではどちらも命は保証できない。
そう説明された両親は、オレの体に兄の首から上をすげ替え、一人の人間にすることを決断した。
成功率はほぼ0に近かったが、それでも藁にも縋る想いで下されたこの首のすげ替えと言う決断の結果、今オレはこうして、日々を当たり前に過ごしている。
生まれたばかりの体だった事、遺伝子的に同じだった双子だった事が幸いだったと言う事を随分後になって聞かされた。
兄は死産と言う事にされ、戸籍上オレが存在してる。
長い時間が流れ、そんなオレも結婚し、子どもを授かり、曲がりなりにも家庭を持つことが出来た。
首と体がよくなじんだ為、今では手術跡が気が付かれる事もほとんどない。
ここ最近思う事がある。
この人生は、オレの人生だったのか・・・
オレは誰なのか・・・
今ついている脳みそは本来兄のモノだった。
だとしたら、今オレが考え、感じ、見ている世界は、兄が考え、感じ、見ている世界なんじゃないだろうか。
確かに体はオレのものだから、子どもたちは間違いなくオレの血が流れているだろう。
でも、その子どもたちに対して、なんだか不思議な感情を抱いてしまうのは、モノを考える脳がオレのモノじゃないからかもしれない。
人は良く、心のある場所として心臓の位置をイメージする。
だが、物事を感じ取る場所はどう考えたって、脳だ。
心がある本当の場所は、脳なのか、心臓なのか。
脳であるのならオレの心だと思ってたものは、兄の心だったのかも知れない。
何十年と思い悩み、苦悩しながら、それでも前を向いて生きてきた。
その悩みは兄の悩みだったのだろうか。
夜そんな事ばかり考えて、最近眠る事が出来なくなってしまった。
また、今日も眠らないまま夜明けを迎えた。
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