- 2024年4月1日 12:40 CAT :
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31デノナルーフルリプイエ
今の時代では病名をつけると言う理由付けで許されるようになったものがある。
オレが子どもの頃は到底許されていなかったことに、気が付けばADHDと言う病名が付き、殴られることもなく、障害者として隔離されるようになった。
オレがリサが出会った頃にはまだそんな病名はなく、オレはただ挙動が一般の人のそれとは違うだけのキチガイとして認定され、当たり前の差別の中で生きてきた。
リサはそんなオレを普通の人間として扱ってくれた。
それがどれだけ嬉しかった事か。
ただ、生憎とそれを素直に表現する事などできず、ただただリサに対して暴言と妄言、暴力を繰り返すだけの毎日だった。
心の中でどれだけ強く思っていても、暴言を吐く衝動を止められない。妄言と妄想が目の前から消えない。
心と体が離反する感覚を止める術など持ち合わせていなかった。
15回目のレイプをした後、いつも以上にぐったりとしたリサを見た時、オレは不意にどうしようもなく居たたまれない心持になり、自分の右手人差し指を右眼窩の中にねじ込んだ。
数日前に大学の図書館で「ロボトミー手術」についての本を読んだ。
かつて、世界中で行われた精神疾患が回復する可能性がある考えられていた手術。
眼窩を通して前頭葉を切除するその方法だ。
愛するリサをこれ以上傷つけたくない。
心でどれだけ思っていても、衝動を抑えることが出来ない。
かつて精神疾患が治ると言われていたこの方法について、どうしても試してみたくてしょうがなかった。
だがしかし、もうこの世界でこの手術は行われていない。
自分で切除するしか方法はなかった。
そしてそれは、きっとリサに対してオレが唯一見せられる愛情表現なんだ。
愛している。愛している。愛している。愛している。
何度も叫びながら、自らの眼球に指をねじ込んでいった。
プツンと言う音にもならない、それでいて強い刺激が確実に脳内を駆け巡った後、目の前は真っ赤になった。
血の涙が止めどなくドクドクと流れ出る。
そして、実に長い時間をかけて意識がなくなる感覚を堪能した。
それからの日々、もう衝動は起きなかった。
これまでのような暴言、妄言、暴力が生活の中から一切消えた。
同時に、それ以外の全ての衝動も消えてしまった。
食欲も性欲もない。
ゲラゲラと笑う事も、涙を流して悲しむことも、絶望に頭を抱える事も、不安で眠れない事も一切ない。
ただ生きている。
ただ生きて、リサの横で感情なくニコニコと笑う日々だ。
無表情のままではあまりに不自然だろうからニコニコと笑う。
その笑顔を見たリサの顔からは、以前のような笑顔が消えた。
夜には声を殺して泣いているらしい。
でもその理由も、もう分かりはしない。
もっとニコニコすれば、その内リサも一緒に笑うようになるだろう。
今、目の前でリサが右眼窩にアイスピックをねじ込もうとしている。
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